母なる超自我の声 |
超自我のあなたを遮る命令の形態は、声としての対象aの形態にて現れる。la forme des impératifs interrompus du Surmoi […] apparaît la forme de (a) qui s'appelle la voix. (ラカン, S10, 19 Juin 1963) |
ラカンの命題は、沈黙することが対象aとしての声と呼ばれるものに値することを意味する。la thèse de Lacan comporte que c'est pour faire taire ce qui mérite de s'appeler la voix comme objet a (J.-A. Miller, Jacques Lacan et la voix, 1988) |
問いがある。父なる超自我の背後に母なる超自我がないだろうか? 神経症においての父なる超自我よりも、さらにいっそう要求し、さらにいっそう圧制的、さらにいっそう破壊的 、さらにいっそう執着的な母なる超自我が。 on posait la question : est-ce qu'il n'y a pas, derrière le sur-moi paternel, ce surmoi maternel encore plus exigeant, encore plus opprimant, encore plus ravageant, encore plus insistant, dans la névrose, que le surmoi paternel ? (Lacan, S5, 15 Janvier 1958) |
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超自我を除いては、何ものも人を悦へと強制しない。超自我は悦の命令である、 「悦せよ jouis!」と。Rien ne force personne à jouir, sauf le surmoi. Le surmoi c'est l'impératif de la jouissance : jouis ! (ラカン, S20, 21 Novembre 1972) |
超自我は絶えまなくエスと密接な関係をもち、自我に対してエスの代表としてふるまう。超自我はエスのなかに深く入り込み、そのため自我にくらべて意識から遠く離れている。das Über-Ich dem Es dauernd nahe und kann dem Ich gegenüber dessen Vertretung führen. Es taucht tief ins Es ein, ist dafür entfernter vom Bewußtsein als das Ich.(フロイト『自我とエス』第5章、1923年) |
超自我が設置された時、攻撃欲動の相当量は自我の内部に固着され、そこで自己破壊的に作用する。Mit der Einsetzung des Überichs werden ansehnliche Beträge des Aggressionstriebes im Innern des Ichs fixiert und wirken dort selbstzerstörend. (フロイト『精神分析概説』草稿、死後出版1940年) |
死の欲動は超自我の欲動である。la pulsion de mort [...], c'est la pulsion du surmoi (J.-A. Miller, Biologie lacanienne, 2000) |
(超自我は原抑圧) |
私の恐ろしい女主人の声 |
何事がわたしに起こったのか、わたしの友人たちよ。君たちの見るとおりだ。わたしは心乱れ、追い立てられ、心ならずもそれに従って、立ち去ろうとしているーーああ、君たちから立ち去ろうとしているのだ。 "Was geschah mir, meine Freunde? Ihr seht mich verstört, fortgetrieben, unwillig-folgsam, bereit zu gehen - ach, von _euch_ fortzugehen! |
そうだ、もう一度ツァラトゥストラは自分の孤独へ帰らなければならないのだ。しかし今度はこの熊はいやいやながらおのれの洞窟へ帰ってゆくのだ。 Ja, noch Ein Mal muss Zarathustra in seine Einsamkeit: aber unlustig geht diessmal der Bär zurück in seine Höhle! |
何事がわたしに起こったのか。だれがわたしに命令するのか。ーーああ、わたしの女主人が怒って、それをわたしに要求するのだ。彼女がわたしに言ったのだ。彼女の名をわたしは君たちに言ったことがあるだろうか。 Was geschah mir? Wer gebeut diess? - Ach, meine zornige Herrin will es so, sie sprach zu mir: nannte ich je euch schon ihren Namen? |
きのうの夕方ごろ、わたしの最も静かな時刻がわたしに語ったのだ。つまりこれがわたしの恐ろしい女主人の名だ。 Gestern gen Abend sprach zu mir _meine_stillste_Stunde_: das ist der Name meiner furchtbaren Herrin. |
それからの次第はこうであるーーわたしは君たちに一切を話さなければならない、君たちの心が、突然に去ってゆく者にたいして冷酷になることがないように。 Und so geschah's, - denn Alles muss ich euch sagen, dass euer Herz sich nicht verhärte gegen den plötzlich Scheidenden! |
君たちは、眠りに落ちようとしている者を襲う驚愕を知っているか。ーー Kennt ihr den Schrecken des Einschlafenden? - |
足の指の先までかれは驚得する。自分の身の下の大地が沈み、夢がはじまるのだ。 Bis in die Zehen hinein erschrickt er, darob, dass ihm der Boden weicht und der Traum beginnt. |
このことをわたしは君たちに比喩として言うのだ。きのう、最も静かな時刻に、わたしの足もとの地が沈んだ、夢がはじまった。 Dieses sage ich euch zum Gleichniss. Gestern, zur stillsten Stunde, wich mir der Boden: der Traum begann. |
針が時を刻んで動いた。わたしの生の時計が息をした。ーーいままでにこのような静けさにとりかこまれたことはない。それゆえわたしの心臓は驚得したのだ。 Der Zeiger rückte, die Uhr meines Lebens holte Athem - nie hörte ich solche Stille um mich: also dass mein Herz erschrak. |
そのとき、声なくしてわたしに語るものがあった。「おまえはそれを知っているではないか、ツァラトゥストラよ」ーー Dann sprach es ohne Stimme zu mir: `Du weisst es, Zarathustra?` - |
このささやきを聞いたとき、わたしは驚鍔の叫び声をあげた。顔からは血が引いた。しかしわたしは黙ったままだった。 Und ich schrie vor Schrecken bei diesem Flüstern, und das Blut wich aus meinem Gesichte: aber ich schwieg. |
と、重ねて、声なくして語られることばをわたしは聞いた。「おまえはそれを知っているではないか、ツァラトゥストラよ。しかしおまえはそれを語らない」ーー Da sprach es abermals ohne Stimme zu mir: `Du weisst es, Zarathustra, aber du redest es nicht!` - |
それでわたしはついに反抗する者のような声音で答えた。「そうだ。わたしはそれを知ってる。しかしわたしはそれを語ることを欲しないのだ」 Und ich antwortete endlich gleich einem Trotzigen: `Ja, ich weiss es, aber ich will es nicht reden!` |
と、ふたたび声なくしてわたしに語られることばがあった。「欲しないというのか、ツァラトゥストラよ。そのことも真実か。反抗のなかに身をかくしてはならない」ーー Da sprach es wieder ohne Stimme zu mir: `Du _willst_ nicht, Zarathustra? Ist diess auch wahr? Verstecke dich nicht in deinen Trotz!` - |
このことばを聞いて、わたしは幼子のように泣き、身をふるわした。そして言った。「ああ、わたしはたしかにそれを言おうとした。しかし、どうしてわたしにそれができよう。そのことだけは許してくれ。それはわたしの力を超えたことなのだ」 Und ich weinte und zitterte wie ein Kind und sprach: `Ach, ich wollte schon, aber wie kann ich es! Erlass mir diess nur! Es ist über meine Kraft!` |
と、ふたたび声なくしてわたしに語られることばがあった。「おまえの一身が問題なのではない、ツァラトゥストラよ。おまえのことばを語れ、そして砕けよ」 Da sprach es wieder ohne Stimme zu mir: `Was liegt an dir, Zarathustra! Sprich dein Wort und zerbrich!` - |
それでわたしは答えた。「ああ、それはわたしのことばだろうか。このわたしが何者だろう。わたしはより価値ある者を待っているのだ。わたしはその者の前に出て砕けるだけの値打ちもない身だ」 Und ich antwortete: `Ach, ist es _mein_ Wort? Wer bin ich? Ich warte des Würdigeren; ich bin nicht werth, an ihm auch nur zu zerbrechen.` |
と、ふたたび声なくしてわたしに語りかけられることばがあった。「おまえの身の成り行きが問題なのではない。おまえはわたしの目には、まだ十分に謙遜ではない。謙遜はもっとも堅い皮をもつものだ」 Da sprach es wieder ohne Stimme zu mir: `Was liegt an dir? Du bist mir noch nicht demüthig genug. Die Demuth hat das härteste Fell.` - |
それでわたしは答えた。「わたしの謙遜の皮は、これまでにあらゆるものを忍んできたではないか。わたしはわたしの高山の麓に住んでいる。その頂がどのくらい高いか、わたしは知らない。だれもそれをわたしに言ってくれた者がないから。しかし、わたしはわたしの谷がどんなに深いかは、よく知っている」 Und ich antwortete: `Was trug nicht schon das Fell meiner Demuth! Am Fusse wohne ich meiner Höhe: wie hoch meine Gipfel sind? Niemand sagte es mir noch. Aber gut kenne ich meine Thäler.` |
と、ふたたびわたしにむかって声なき声は語りかけた。「おお、ツァラトゥストラよ、山を動かそうとする者は、谷と低地をも動かすのだ」 Da sprach es wieder ohne Stimme zu mir: `Oh Zarathustra, wer Berge zu versetzen hat, der versetzt auch Thäler und Niederungen.` - |
それでわたしは答えた。「まだわたしのことばは山を動かしたことがない。またわたしの語ったことは人間たちに到達することもなかった。なるほどわたしは人間たちに近っいて行った。しかしわたしはまだ人間たちへ行き着いていないのだ」 Und ich antwortete: `Noch versetzte mein Wort keine Berge, und was ich redete, erreichte die Menschen nicht. Ich gieng wohl zu den Menschen, aber noch langte ich nicht bei ihnen an.` |
と、ふたたび声なき声はわたしに言った。「おまえはそれについて何を知ろう。露は、夜が最も深い沈黙にはいったときに、草におりるではないか」ーー Da sprach es wieder ohne Stimme zu mir: `Was weisst du _davon_! Der Thau fällt auf das Gras, wenn die Nacht am verschwiegensten ist.` - |
それでわたしは答えた。「かれら人間たちは、わたしがわたし自身の道を見いだして、それを歩んで行ったとき、わたしを嘲笑した。そして実際わたしの足はそのとき慄えたのだ。 Und ich antwortete: `sie verspotteten mich, als ich meinen eigenen Weg fand und gieng; und in Wahrheit zitterten damals meine Füsse.` |
するとかれらはわたしに言った。おまえは正しい道を忘れた。 いまは慄えて、歩むことも忘れようとしているのだなと」 Und so sprachen sie zu mir: `du verlerntest den Weg, nun verlernst du auch das Gehen!` |
と、ふたたびあの声はわたしにむかって言った。「かれらの嘲笑がなんであろう。おまえは服従することを忘れた者の一人だ。いまおまえは命令しなければならない。 Da sprach es wieder ohne Stimme zu mir: `Was liegt an ihrem Spotte! Du bist Einer, der das Gehorchen verlernt hat: nun sollst du befehlen! |
おまえは知らないのか、いかなる者が万人に最も必要であるかを。最も必要なのは、偉大なことを命令する者だ。 Weisst du nicht, _wer_ Allen am nöthigsten thut? Der Grosses befiehlt. |
偉大なことをしとげるのは、困難だ。しかしより困難なのは、偉大なことを命令することだ。 Grosses vollführen ist schwer: aber das Schwerere ist, Grosses befehlen. |
おまえの最も許しがたい点はこれだ。おまえは力をもっている、しかもおまえは支配しようとしない」 ーー Das ist dein Unverzeihlichstes: du hast die Macht, und du willst nicht herrschen.` - |
それでわたしは答えた。「わたしには命令するための獅子の声が欠けている」 Und ich antwortete: `Mir fehlt des Löwen Stimme zu allem Befehlen.` |
と、ふたたびささやくようにわたしに語りかけるものがあった。「嵐をもたらすものは、もっとも静かな言葉だ。鳩の足で歩んでくる思想が、世界を左右するのだ。 Da sprach es wieder wie ein Flüstern zu mir: `Die stillsten Worte sind es, welche den Sturm bringen. Gedanken, die mit Taubenfüssen kommen, lenken die Welt. |
おお、ツァラトゥストラよ、おまえは、来たらざるをえない者の影として歩まねばならぬ。それゆえおまえは命令しなければならぬ。命令しながら先駆しなければならぬ」 Oh Zarathustra, du sollst gehen als ein Schatten dessen, was kommen muss: so wirst du befehlen und befehlend vorangehen.` - |
わたしは答えた。「わたしは差恥を感ずる」と。 Und ich antwortete: `Ich schäme mich.` |
と、ふたたび声のない声はわたしにむかって語りかけた。「おまえはこれから幼子になれ、そして羞恥の思いを放棄しなければならない。 Da sprach es wieder ohne Stimme zu mir: `Du musst noch Kind werden und ohne Scham. |
青年期の誇らしさがまだおまえを離れない。おまえは青年になることがおそかったのだ。しかし幼子になろうとする者は、おのれの青年期をも乗り超えなければならぬ」ーー Der Stolz der Jugend ist noch auf dir, spät bist du jung geworden: aber wer zum Kinde werden will, muss auch noch seine Jugend überwinden.` - |
それでわたしは長いあいだ思いに沈んだ。そしてわたしはふるえた。だが、ついにわたしは言った。それはわたしが最初に言ったあのことばだ。「わたしは欲しない」 Und ich besann mich lange und zitterte. Endlich aber sagte ich, was ich zuerst sagte: `Ich will nicht.` |
と、わたしのまわりに笑い声が起こった。ああ、なんとその笑い声がわたしの腸をかきむしり、わたしの心臓をずたずたにしたことだろう。 Da geschah ein Lachen um mich. Wehe, wie diess Lachen mir die Eingeweide zerriss und das Herz aufschlitzte! |
すると、あの声はこれを最後にわたしにむかって語りかけた。「おお、 ツァラトゥストラよ、おまえの果実は熟したのだ。だが、おまえはまだおまえの果実にふさわしく熟していない。 Und es sprach zum letzten Male zu mir: `Oh Zarathustra, deine Früchte sind reif, aber du bist nicht reif für deine Früchte! |
それゆえおまえは孤独のなかにもどってゆかねばならぬ、おまえはいっそう熱して美味にならねばならぬのだ」ーー So musst du wieder in die Einsamkeit: denn du sollst noch mürbe werden.` - |
そしてもう一度笑い声が起こり、それは遠ざかって行った。もとに倍する静けさがわたしをつつんだ。わたしは地に伏したままだった。汗が五体から噴き出した。 Und wieder lachte es und floh: dann wurde es stille um mich wie mit einer zwiefachen Stille. Ich aber lag am Boden, und der Schweiss floss mir von den Gliedern. |
ーーわしの友人たちよ、これで君たちは一切を聞いたのだ。また、なぜわたしがわたしの孤独に帰らねばならぬかをも、聞き知ったのだ。わたしは何事をもつつみかくすことはしなかった。 - Nun hörtet ihr Alles, und warum ich in meine Einsamkeit zurück muss. Nichts verschwieg ich euch, meine Freunde. |
同時に、君たちはわたしから次のことをも聞いたのだ、すべての人間のうちでだれが最も沈黙する者であるかーーまた最も沈黙する者であろうと欲するかを。 Aber auch diess hörtet ihr von mir, _wer_ immer noch aller Menschen Verschwiegenster ist - und es sein will! |
ああ、わたしの友人たちよ。わたしは君たちになお言うべきことをもっているのだ。君たちになお与えるべきものをもっているのだ。だが、なぜ、わたしはそれを与えないのか。わたしは吝嗇なのだろうか。ーー Ach meine Freunde! Ich hätte euch noch Etwas zu sagen, ich hätte euch noch Etwas zu geben! Warum gebe ich es nicht? Bin ich denn geizig?" - |
ツァラトゥストラがこのことばを言い終えたとき、激しい苦痛がかれを襲った。そして友人たちとの別れの迫ったことが、かれを悲しませた。ツァラトゥストラは声を放って泣いた。だれひとりかれを慰めることばをもたなかった。その夜、友人たちをあとに残して、かれはひとり去った。 Als Zarathustra aber diese Worte gesprochen hatte, überfiel ihn die Gewalt des Schmerzes und die Nähe des Abschieds von seinen Freunden, also dass er laut weinte; und Niemand wusste ihn zu trösten. Des Nachts aber gieng er allein fort und verliess seine Freunde. |
(ニーチェ『ツァラトゥストラ』第2部「最も静かな時刻 Die stillste Stunde」) |
………………
わたしに最も深く敵対するものを、すなわち、本能の言うに言われぬほどの卑俗さを、求めてみるならば、わたしはいつも、わが母と妹を見出す、―こんな悪辣な輩と親族であると信ずることは、わたしの神性に対する冒瀆であろう。わたしが、いまのこの瞬間にいたるまで、母と妹から受けてきた仕打ちを考えると、ぞっとしてしまう。彼女らは完璧な時限爆弾をあやつっている。それも、いつだったらわたしを血まみれにできるか、そのときを決してはずすことがないのだ―つまり、わたしの最高の瞬間を狙って[in meinen höchsten Augenblicken]くるのだ…。そ のときには、毒虫に対して自己防御する余力がないからである…。生理上の連続性が、こうした予定不調和[disharmonia praestabilita]を可能ならしめている…。しかし告白するが、わたしの本来の深遠な思想である 「永遠回帰」 に対する最も深い異論とは、 つねに母と妹なのだ [Aber ich bekenne, dass der tiefste Einwand gegen die »ewige Wiederkunft«, mein eigentlich abgründlicher Gedanke, immer Mutter und Schwester sind―]。 (ニーチェ『この人を見よ』「なぜ私はこんなに賢いのか」第8節--妹エリザベートによる差し替え前版、1888年) |
Wenn ich den tiefsten Gegensatz zu mir suche, die unausrechenbare Gemeinheit der Instinkte, so finde ich immer meine Mutter und Schwester, ― mit solcher canaille mich verwandt zu glauben wäre eine Lästerung auf meine Göttlichkeit. Die Behandlung, die ich von Seiten meiner Mutter und Schwester erfahre, bis auf diesen Augenblick, flösst mir ein unsägliches Grauen ein: hier arbeitet eine vollkommene Höllenmaschine, mit unfehlbarer Sicherheit über den Augenblick, wo man mich blutig verwunden kann ― in meinen höchsten Augenblicken, …. denn da fehlt jede Kraft, sich gegen giftiges Gewürm zu wehren …. Die physiologische Contiguität ermöglicht eine solche disharmonia praestabilita …. Aber ich bekenne, dass der tiefste Einwand gegen die "ewige Wiederkunft", mein eigentlich abgründlicher Gedanke, immer Mutter und Schwester sind. ― (NIETZSCHE, ECCE HOMO) |
私にとって忘れ難いのは、ニーチェが彼の秘密を初めて打ち明けたあの時間だ。あの思想を真理の確証の何ものかとすること…それは彼を口にいえないほど陰鬱にさせるものだった。彼は低い声で、最も深い恐怖をありありと見せながら、その秘密を語った。実際、ニーチェは深く生に悩んでおり、生の永遠回帰の確実性はひどく恐ろしい何ものかを意味したに違いない。永遠回帰の教えの真髄、後にニーチェによって輝かしい理想として構築されたが、それは彼自身のあのような苦痛あふれる生感覚と深いコントラストを持っており、不気味な仮面 unheimliche Maske であることを暗示している。 |
Unvergeßlich sind mir die Stunden, in denen er ihn mir zuerst, als ein Geheimnis, als Etwas, vor dessen Bewahrheitung ... ihm unsagbar graue, anvertraut hat: nur mit leiser Stimme und mit allen Zeichen des tiefsten Entsetzens sprach er davon. Und er litt in der Tat so tief am Leben, daß die Gewißheit der ewigen Lebenswiederkehr für ihn etwas Grauen-volles haben mußte. Die Quintessenz der Wiederkunftslehre, die strahlende Lebensapotheose, welche Nietzsche nachmals aufstellte, bildet einen so tiefen Gegensatz zu seiner eigenen qualvollen Lebensempfindung, daß sie uns anmutet wie eine unheimliche Maske.(ルー・アンドレアス・サロメ、Lou Andreas-Salomé Friedrich Nietzsche in seinen Werken, 1894) |
フロイトにとって不気味なものは、「反復強迫=永遠回帰=死の欲動」である(参照)。 |