以下、「享楽の回帰[Retour de la jouissance] =トラウマの回帰[Retour du traumatisme]」の別ヴァージョンである。 |
そこでは、フロイトの抑圧されたものの回帰[Wiederkehr des Verdrängten]は、原抑圧されたものの回帰[Wiederkehr des Urverdrängten]と後期抑圧されたものの回帰[Wiederkehr desNachdrängten]があり、前者はラカンの享楽の回帰[Retour de la jouissance]に相当し、フロイトラカン両者においてトラウマの回帰[Retour du traumatisme]、喪われた対象の回帰[Retour du objet perdu]であることを示した。 |
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ところで、フロイトは、不気味なものの回帰をも言っている。 |
不気味なものは秘密の慣れ親しんだものであり、一度抑圧をへてそこから回帰したものである[Es mag zutreffen, daß das Unheimliche das Heimliche-Heimische ist, das eine Verdrängung erfahren hat und aus ihr wiedergekehrt ist,](フロイト『不気味なもの Das Unheimliche』第3章、1919年) |
そしてこの回帰を反復強迫と等置している。 |
いかに同一のものの回帰という不気味なものが、幼児期の心的生活から引き出しうるか。Wie das Unheimliche der gleichartigen Wiederkehr aus dem infantilen Seelenleben abzuleiten ist〔・・・〕 心的無意識のうちには、欲動蠢動から生ずる反復強迫の支配が認められる。これはおそらく欲動の性質にとって生得的な、快原理を超越するほど強いものであり、心的生活の或る相にデモーニッシュな性格を与える。 Im seelisch Unbewußten läßt sich nämlich die Herrschaft eines von den Triebregungen ausgehenden Wiederholungszwanges erkennen, der wahrscheinlich von der innersten Natur der Triebe selbst abhängt, stark genug ist, sich über das Lustprinzip hinauszusetzen, gewissen Seiten des Seelenlebens den dämonischen Charakter verleiht,〔・・・〕 |
不気味なものとして感知されるものは、この内的反復強迫を思い起こさせるものである。 daß dasjenige als unheimlich verspürt werden wird, was an diesen inneren Wiederholungszwang mahnen kann.](フロイト『不気味なもの Das Unheimliche』第2章、1919年) |
ーーフロイトは、この内的反復強迫[inneren Wiederholungszwang]を1926年の『制止、症状、不安』では無意識のエスの反復強迫[Wiederholungszwang des unbewußten Es]と言い換えている。 さらにこの不気味なものは異者化されているとしている。 |
不気味なものは、抑圧の過程によって異者化されている[dies Unheimliche ist …das ihm nur durch den Prozeß der Verdrängung entfremdet worden ist.](フロイト『不気味なもの』第2章、1919年、摘要) |
これはラカンも同様に指摘している、ーー《異者がいる。…異者とは、厳密にフロイトの意味での不気味なものである[Il est étrange… étrange au sens proprement freudien : unheimlich] 》(Lacan, S22, 19 Novembre 1974) |
この異者とは厳密には異者としての身体であり、ーー《われわれにとって異者としての身体[ un corps qui nous est étranger](Lacan, S23, 11 Mai 1976)ーー、この異者身体こそ、ラカンの現実界の享楽である[参照]。 |
さらに異者としての身体[Fremdkörper]はフロイトの定義においてトラウマであり、レミニサンスする。 |
トラウマないしはトラウマの記憶は、異者としての身体 [Fremdkörper] のように作用する。これは後の時間に目覚めた意識のなかに心的痛み[psychischer Schmerz]を呼び起こし、殆どの場合、レミニサンス[Reminiszenzen]を引き起こす。 das psychische Trauma, respektive die Erinnerung an dasselbe, nach Art eines Fremdkörpers wirkt,..…als auslösende Ursache, wie etwa ein im wachen Bewußtsein erinnerter psychischer Schmerz … leide größtenteils an Reminiszenzen.(フロイト&ブロイアー 『ヒステリー研究』予備報告、1893年、摘要) |
この異者身体のレミニサンス[Reminiszenz des Fremdkörper]が事実上、トラウマの回帰[Wiederkehr des Trauma]であり、不気味なものの回帰[Wiederkehr des Unheimliche]に他ならない。 |
そしてここに現実界のトラウマのレミニサンスが付け加わる。 |
私は問題となっている現実界は、一般的にトラウマと呼ばれるものの価値をもっていると考えている。これを「強制」呼ぼう。これを感じること、これに触れることは可能である、レミニサンスと呼ばれるものによって。レミニサンスは想起とは異なる[Je considère que …le Réel en question, a la valeur de ce qu'on appelle généralement un traumatisme. …Disons que c'est un forçage. …c'est ça qui rend sensible, qui fait toucher du doigt… ce que peut être ce qu'on appelle la réminiscence. …la réminiscence est distincte de la remémoration] (Lacan, S23, 13 Avril 1976、摘要) |